続・あなたの色に染められて
第1章 Sweet life
カキーン!
勢いよく放たれた白球が 春色のパステルカラーの空に吸い込まれていく。
ベンチで見守っていたナインは一斉に身を乗り出して白球の行方を追った。
『よし!回れ!!サヨナラだ!』
俊足のランナーは躊躇することなく三塁ベースを蹴ってホームに滑り込み
『……セーフ!試合終了!』
『よっしゃー!』
その瞬間俺たちはベンチから飛び出してサヨナラヒットを放った立役者に飛び付き 抱きついて
『痛ぇよ!バカ!!』
今年もまた偉大なるこの先輩のお陰で春の大会を征した。
***
『いゃ~ 今年はさすがにダメだと思ったわ。』
『おまえあの変化球狙ってたの?』
俺ら大人の野球少年は昔のまま相変わらず白球を追いかけてた。
『なんかさ 結婚して益々パワーアップしたんじゃない?』
『関係ねぇだろ。』
ヘルメットを脱ぎながら得意気に微笑むその視線の先には
『京介さーん!』
両手を高く挙げピョンピョンと飛び跳ね無敵の微笑みでスタンドから手を振る 愛してやまない可愛い可愛い奥さんの璃子ちゃん。
『格好よかったですよぉ!』
本当はすごく嬉しいくせにヘルメットをスッと上げるだけなんて本当に素直じゃないんだから。
結婚して半年 俺らの目に映る二人はうまくいっていた。
『おめでとうございます!』
グラウンドから出てきた京介さんに駆け寄って 大きな目を細めて愛しいダンナさまを見上げる璃子ちゃんは
『もう 泣いちゃいましたよ。』
美紀には言えないけど本当に可愛らしくて 見てる俺も目を細めてしまう。
『相変わらずアイツら仲いいな。』
そう俺に声を掛けてくるのは溺愛してる愛娘 チーちゃんを抱いた師匠の長谷川さん。
『京介さんのあの笑顔は璃子ちゃん限定ですからね。』
京介さんは自分の帽子を璃子ちゃんに被せニンマリと頬を緩めて勝利のVサイン。
ホント俺の前と璃子ちゃんの前じゃ180°違うあの態度。
『直也お疲れ~!』
『おぉ まーくん ほらおいで。パパの格好いいところ見てまちたぁ?』
俺だってきっと変わった。
やっと一歳になった奥さん似の我が息子を胸に抱いて赤ちゃん言葉で喋りかけて
『雅也 パパ格好良かったよねぇ。』
すっかりママの顔になったしっかり者の俺のカミさんと仲良く寄り添って
それぞれがそれなりの幸せのカタチを作っていた。