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続・あなたの色に染められて

第3章 知らない過去


梅雨の長雨のおかげで中庭でお昼休みをとれなくなった私たちは 事務所の隅にあるソファーが最近の指定席になっていた。

『いただきまーす。』

『鮭と昆布どっちにします?』

大きめのタッパーに二人分のおかずと 大きなおにぎりを2つと小さめのおにぎりが1つ

『昆布。』

『はい どうぞ。』

これがいつもの定番スタイル。

『おっ 今日の卵焼きしらすが入ってる。』

『昨日 お母さんに教えてもらったの。』

『うん懐かしい味だな。野球のときの弁当によく入ってた。』

毎日忙しい京介さんの健康管理も奥さんの立派な務め。

前の日の残り物も入るけど なるべく冷凍食品には頼らないと心掛けて毎朝キッチンに立つ。

『美味しい?』

『うん うまい。』

ただこの言葉が聞きたくって。

『璃子 お茶くれる?』

『ハイハイ。』

水筒から冷たいお茶をお揃いのマグカップに注ぐと

『そのぐらい自分でやりなさいよ。』

衝立代わりの背の高い植木の横からひょっこりと顔を出して

『璃子ちゃん甘やかしちゃダメよ。京介は昔っからこうやって甘えん坊なんだから。』

空いてる向かいのソファーに腰を下ろしてタメ息混じりに微笑みながら

京介さんはそのお茶をグイッと飲み干すと

『なんだよ 沙希に頼んでねぇだろ。』

拗ねた顔して最後のウインナーを口にした。

『またそうやって 子供の頃と同じ、すぐに拗ねるんだから。ホント成長しないよね 京介は。』

『うるせぇ。』

そう言って最後の一口を頬張ると

♪~♪~

私のマグカップに手を伸ばしゴクリと一気に流し込んで

『はい 森田です…あっ いつもお世話になってます。』

私の頭にポンと手を置きながら席を立ち自分の席に戻った。

『相変わらず京介はバタバタしてるね。』

『えぇ 忙しい人ですから。』

残りのおかずを摘まみながら新しいお茶をカップに注いでいると沙希さんは

『この卵焼き食べてもいい?』

『あっ…どうぞ…あっ…箸 箸…。』

パクッ

箸を差し出すのと同じタイミングで卵焼きはもう沙希さんの口のなか。

『うん…美味しい。お料理頑張ってるんだ。』

誉めてもらうと人は悪い気はしないもの

『この間 京介が璃子ちゃんのお弁当すごく美味しいってノロケてたから。』

『…え?』

沙希さんは私の瞳を見つめると柔らかくニコリと微笑んだ。

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