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続・あなたの色に染められて

第3章 知らない過去


『あの…小さい頃 京介さんてどんな子だったんですか?』

優しく微笑んだ瞳に引き付けられた私は 自然と沙希さんに尋ねていた。

『そうね 今と変わらないかも。負けず嫌いで頑固で、甘えん坊さんで。』

卵焼きが美味しいって言ってくれたから?

ノロケてるって聞いたから?

それとも 沈黙に耐えられなかったから?

聞いてしまったことをすぐに後悔するってわかっていたのに

『試合で負けると中庭で夜遅くまで素振りしてたわ。』

だって 沙希さんは私の知らない京介さんをたくさん知ってる。

『高校でのは京介が寮に入っちゃってあんまり知らないけど 試合はおばさんたちと応援に行ってたの。』

私はリビングに飾られてる写真でしかその雄姿を目にしたことはないけど 沙希さんその目でちゃんと心に焼き付けたんだ。

『竜兄も上手だったけど京介は別格だったわ。1年生の時からベンチ入りして 2年生でスタメン、3年生ではキャプテンで4番。残念ながら甲子園の切符は最後の最後で手に入らなかったけど…。楽しませてもらったな。』

昔を懐かしむように微笑む沙希さんの顔を見たら…胸がギュッと締め付けられた。

『この間 久しぶりにボールを追いかけてる姿を見たけど相変わらずね。全盛期とまではいかないけど ここぞっていう場面でしっかり打って ちゃんと指示だして…まだ野球好きなんだなぁって。』

そか 沙希さんは京介さんが一番輝いていたときも知ってるんだ。

『和希も京介ぐらい上手になってくれればいいけどなぁ。』

沙希さんが目を細めた視線の先には 電話を終えてこっちに戻ってくる京介さん。

『何ジロジロ見てんだよ。』

『また そういう言い方して。だから昔と変わってないって言われるのよ。』

『沙希が知らないだけで 俺すげぇ変わりましたから。』

『ハイハイ…これじゃ璃子ちゃんも大変ね。』

二人がくっつくとこうやって楽しそうに貶しあう。

『璃子 コーヒーくれる?』

『だから!自分で取りに行きなさいよ!』

いいじゃない 私がイヤだって言ってるわけじゃないんだから。

『沙希さんも飲みますか?』

自分で話を振ったのにね…逃げるなんて卑怯かな。

『…えと…じゃ お願いしようかな。』

『ほら おまえだって頼んでんじゃん!』

背中越しに聞こえる二人のじゃれあう声。

その声からただ逃げたかった。

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