続・あなたの色に染められて
第4章 夏祭り
長かった梅雨も明け 真っ青な空と照りつける太陽の下 明日に迫った夏祭りの用意をしていると 本部を手伝いに来てくれた風間くんが私の顔を覗き込んだ。
『何 ヘラヘラしてんだよ。』
『別に~。』
御祭りの実行委員の皆さんと 本部を設置している私は 初めての夏祭りに少し浮かれていた。
『ウソつけ。顔に書いてあんぞ。』
『うふふ…いいの。』
二人で長テーブルを持って所定の位置まで運ぶこと何回目か 額に流れる汗を首から下げたタオルで拭いて 麦茶を一口飲むと
『あら 璃子ちゃんは女の子だから力仕事はいいのよ?』
『大丈夫です。私力持ちですから。』
パンフレットやらうちわの用意をする婦人会の方たちが気を使って声をかけてくれた。
『ごめんなさいね 酒蔵のブースも忙しいっていうのにお手伝いに来てもらっちゃって。』
本当は京介さんが指揮を執る酒蔵のブースをお手伝いしたかったけど 通訳として本部にお世話になる以上 こちらのお手伝いが嫁として最優先事項で。
『あっちはたくさん人がいますから。』
ここに来る前に寄った酒蔵のブースにはYシャツの袖を巻くって率先して働く京介さんがいた。
その姿は仕事をしているときとも 野球をしているときとも違う 真剣な眼差しにそのもので
…格好いい。
汗を拭うその仕草さえも色香が漂い そんな一生懸命な彼と目が合えば私はまるで少女のように胸を締め付けられた。
『だから ヘラヘラすんなって。』
『してない!』
あの光景を思い出す度に顔がニヤケてしまってるんだと思う。
『ちゃんと 前見て歩けって…オイ!』
『ワァッ!』
『バカ!大丈夫か?』
パイプ椅子を何脚か抱えて運んでいると 下に積まれていた段ボールに足を捕られて転びそうになった私
風間くんがスッと腕を捕んでくれたから転ばずには済んだけど
『言ったそばからこれかよ。まったく璃子ちゃんは…。』
いつも優しく微笑む眼差しが 真剣な表情に変わるから
『…ゴメンナサイ。』
私は小さくなって頭を下げる。
『明日 浴衣着るんでしょ?足挫いたら着れないよ?』
チャラチャラしているように見えるのに 時折見せるこの真剣な眼差し
『よし!早く終わらせて酒蔵のブースを手伝わないと。』
私の頭をポンと叩いて椅子を持ち上げる彼は女の人の扱いに馴れていた。