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続・あなたの色に染められて

第6章 すれ違い


『いいんですか?』

お風呂上がりドライヤーを探しながらリビングのドアを開けるとソファーに座る京介さんが手招きした。

『なんだか久しぶりですね。』

彼の足の間に腰を下ろし大きな手に身を委ねる。

その大きな手のひらは私の頭がすっぽりと納まるほど頼もしく心までも優しく包み込まれるようだった。

『熱くない?』

コクりと首を縦に振ると風を纏った柔らかすぎる私の髪が頬を隠し自然と私の瞼を閉じさせた。

その闇は私の心の片隅に隠れていた不安を呼び起こさせ変に心を疼かせる。

今日 久しぶりに球場に訪れると笑えない笑い話を聞いた。

和希くんが京介さんの子だったら…なんてあり得ない話。

いつものように沙希さんが調子にのって話のネタにでもなればとふざけ半分で口にしたのだろう。

でも そのサービス精神旺盛な彼女の安易な考えが私の心を毎度苦しめる。

そして…私の頬に涙を伝わせる。

幸せなぬくもりを彼の大きな手から感じて 今 一番幸せな時間を過ごしているのにポトリと私の膝に落ちる一滴

…普通の夫婦もこんなものなの?

パパもママもこんな試練を与えられながら私を授かり育ててきたの?

ふと あの優しかった微笑みを思い浮かべた。

そういえば 忙しさに託つけてもう何ヵ月も実家に帰っていない。

「いつでも帰っておいで…」

嫁ぐ前夜にパパが私を抱きしめながらそう言ってくれた。

でも 今帰ってしまったら心配させてしまうんじゃないかと なかなか足を向けられなかった。

私の心の休まる場所はここなのに…

京介さんの腕の中なのに…

『おい どうした?』

気付けば肩を震わせて大粒の涙を落とす私

抱き上げられ彼の膝に乗って大きな胸に涙のあとを残す私

何も言わずに私の体を包み込んでまだドライヤーの熱が残る髪を優しく撫でてくれることがすごく嬉しいのに

『ごめんな。』

幼馴染みだと突然現れたあの日からどうしても好きになれなかった。

それは きっとあの微笑みが私たちを苦しめると直感で感じたからだ。

限界を何度も迎えた私…

その度に我慢強くなっていったよね。

でも もうこれ以上強くはなりたくない。

彼の胸を叩きながら声をあげて泣く私

もし 京介さんを選ばなかったらこんなことにはならなかったのかな…

一番考えてはいけない言葉が私の頭の中を過った。

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