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修練の鏡と精霊の大地

第4章 穴

「ウワリャァーーッ!!」


 コウヤは大きく叫びながら、斧でキューブを切り裂く。


 だが、弾力のある透明の身は熱を持って縮みだし、より弾力が増していた。


 強烈な熱さが、コウヤの肉を焦がし始める。


 透明な油の塊は、太い肉を叩き切るようだった。


 己のレスラーのプライドが、逃げる事を許さなかった。どんな敵でも真正面から肉体で戦う。


 岩顔と戦った時、あまりの大きさに臆してしまった自分を否定したかった。だから、無理だとわかってはいても戦うことを選ぶ。


 それが、どんなに体を鍛えても、大きくできない体質をカバーするための格闘心だ。


 だが、その気力も続かなかった。


 火の熱さが、心をも焼いていく。


 痛みに慣れているレスラーとはいえ、肉が焼けるほどの炎の熱さは未知な痛みだった。


 三人の言葉は聞こえて来ない。


「くそ……」


 もはやコウヤとゼラチナスオイルキューブとの戦いではなく、これはコウヤ一人、自分自身との戦いでもあった。



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