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修練の鏡と精霊の大地

第10章 老人と塔

 奈美はかけらを袋の中に入れると、そっと懐の中におさめた。


 いつの間にやらライオンの姿が見当たらない。どこに行ったのかと、辺りを見渡す。


 すると、巨大な箱のフタがゆっくりと閉じていくではないか。


「まさか、箱に吸い込まれた?」


 球也はホッとして床にへたり込んだ。


「これじゃ、どの箱を選んでも安心出来ねえよ……どこに何が出るかわからない」


 球也は項垂れた。


 奈美がライオンに踏み潰されたペンと、グシャグシャになったメモ帳を持ってきた。


「奈美ちゃん、ごめんな。俺があの箱を開けたばっかりに……」


 球也は申し訳なさそうに言うと、奈美は目を閉じて首を軽く横に振った。


 そして奈美も床に座り込み、球也と同じように項垂れた。



 その頃、ユングは走っていた。二人が登っている塔に向かって、早く手助けをしに行こうと……だが、歩幅の狭さが目的地を遠ざけていた。


「ハァハァハァ……こんなに走ってんのに、なかなか目的地に近付けねぇ……」


 空は夕暮れ。青い空から徐々にオレンジ色へと変わりつつある。


「球也くん、奈美ちゃん、悪いがちょっと遅くなりそうだ。足が……短い」


 ユングは一本の木の根元に座った。


「暗くなってきたら危ないなぁ……明かりがないから怖いよ」


 ふとユングは木を見上げた。


 葉のしげる約2メートル上の部分に、なにやらもっさりとした物体が目に入った。


「あれは……」


 ユングは立ち上がり、木に登りはじめた。



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