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修練の鏡と精霊の大地

第18章 闇の者

 やがて、揺れはおさまり、音の無い静かな情景が続いた。


 気が付けば、村を仕切っていた壁がなくなり、荒れた地面だけが残っていた。


 闇の者が復活したのだろうか?


 心にも残るものがあった。


 ペタロだけでなく、純化までが、闇の者の餌食となった。


 球也は両手両膝をつき、泣き叫ぶ。


 ただ、思いを強く吐き出して泣いた。


 奈美は淀屋橋に抱き付いた。笑いと喜び以外の感情が、一気に溢れ出した。


「神よ……仏よ……闇の者はどこに行けば倒せるのじゃ? わしらの力では無理なのか? なにをすればいい?」


 淀屋橋は半放心状態で天につぶやく。


 それぞれの心に残ったのは、悲しみと絶望と言う名の苦しみ。


 今はただ、無駄に時間が過ぎていくだけだった。


 なにをどうすればいいのか、どこに行けばいいのか、目標のない迷いばかりが頭の中を巡る。


 そんな状況の中、口を開いたのは淀屋橋だった。


「これが、この世界に来た答えではなかろう……わしらは、まだここに残っておる。きっと、なにかしなければいけない重大なことが、あるのかもしれんのぅ」


 奈美は淀屋橋にしがみついた。


「もう、帰りたい。こんなとこ、いたくない」 


 淀屋橋はそんな奈美の頭を、優しく撫でる。


「その気持ちは、おじいちゃんも一緒だ。早く帰って、みんなにお前の声を聞かせてあげたいわい」


 奈美はコクンと頷いた。


 奈美はまだ、気持ち的には弱くなってなかった。


 唯一、身内である祖父の淀屋橋がいてくれたからであろう。


 だが、球也は、自分一人の心の中で戦っていた。


 地面に座ったまま、なにも言わず、ずっと目をとじていた。


「球也くん、とりあえず、他に誰かいないか探してみないか?」と淀屋橋が声をかける。



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