テキストサイズ

修練の鏡と精霊の大地

第21章 そして……

 純化は喜代の手をつなぎ、球場を後にした。


 数歩進んで、ふと振り向いた。その目は、少し寂しげだった。


「みんなごめんね。なんか……今の自分が、みんなとついていけてない気がした。バイバイみんな、バイバイきゅう坊、甲子園、応援してるからね」


 そう囁くと、二人はそのまま静かに去っていった。


 人間として生まれ変わりながらも、純粋な人間とは、どこか違うギャップを感じた純化は、喜代とともに、みんなとの距離を置くことにした。



 その後、SNSにも、純化のブログの更新は、されてなかった。






 精霊の大地。


 小高い丘の上で、ナナエとドラムが並んで下界を見下ろしていた。


 赤いドラム缶体型の生物ドラムと、人間のようで人間ではないナナエは、互いに身を寄せあいながら、談話をしていた。


「いやぁ、ナナエさん。久しぶりに会いますが、相変わらず気色悪いですなぁ」


「いやいや、ドラム殿も、人間離れした姿で」


「お互い、人間じゃございませんからな」


「ごもっとも……しかし、光も闇も、妖精の国が無くなってしまいましたな」


 ナナエが言うと、ドラムは大きく息を吐いた。


「まだ、国は出来てないんですな。この前、一気に精霊が増えましたよ。でも、しばらくは、精霊ができることはないですな」


「我々も休みがあってもいいでしょう。受付のフグにも休暇を与えますよ」


 ドラムはゆっくりと立ち上がった。


「もし、よかったら冥界にお邪魔してもいいかな? 大地には屋根のある場所がなくてね」


「あ、もちろん大歓迎ですよ。ドラム殿専用にひと部屋開けますよ」


 ナナエはそう言って、小走りで冥界へ、戻っていった。


 ドラムは遠い遠い先に見える、虹と光の橋を眺めた。


「さて、次にあの橋を渡る者は来るのかねぇ……また、訪ねて来いよ〜」







  【了】




ストーリーメニュー

TOPTOPへ