テキストサイズ

修練の鏡と精霊の大地

第21章 そして……

 純化も喜代と一緒に大喜びだ。


 だが、二人は、なにも言わず、その場を静かに離れ、球場を去っていった。


 球也は甲子園の切符を手に入れ、喜びを分かち合おうと、みんなの前で大きく手を振った。


「やったーっ!!」


 高校生活最後のチャンスを掴んだ球也。


 落ち込んだ時があっても、みんなが笑顔で見守ってくれている。


 家族も応援してくれていた。


 母の雛恵は号泣だった。


 今日は球也にとって、最高の日であり、また再スタートの日でもあった。


 一緒に喜んでいた淀屋橋が、奈美の肩をポンと叩いた。


「出口で、それを渡すんじゃろ。そろそろ、待ってようか?」


「ううん、まだいいよ」


 奈美の手には、淡いピンク色の小さな封筒が握られていた。


 顔をほのかに赤く染め、尊敬の眼差しで球也の姿をジッと見ていた。


「私の中の修練の鏡は、いま新しい希望を写してるんだ。おじいちゃん、応援してね」


「うむ、奈美は自分の信じる方向に未来の姿を写しなさい。わしも二人を応援するぞ」



ストーリーメニュー

TOPTOPへ