
キラキラ
第31章 イチオクノ愛
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温かなものにくるまれていることに気づいた。
ブランケットだか、 毛布だか。
なにせ、肌触りのよい保温性のある何か。
俺は、目を閉じたまま、うーん……と、考える
。
さっきまでの俺は屋外の段ボールの下で、雨宿りをしていたはずだよな。
寒いし、腹へったし、ちょーピンチだったはず。
……今度は俺の身に何が起きた?
てゆーか、俺最近こんなんばかりじゃん。
寝て起きたらとんでもないことになってた、ってケースが多すぎて、起きるのが怖いよ……。
だけど、ふと、ブランケット越しに、なんだかボソボソと話し声がすることに気がついた。
人がいる。
でも、頭までブランケットにくるまってるから、よく聞こえない……。
気になった俺はそーっと目を開け、頭を持ち上げた。
すると、視界に入ったのは、薄暗い部屋。
いや……部屋というより……お店なんだろうな?
壁には、グラスやリキュールの瓶が並べられ、間接照明で照らされたハイソな景色がみえる。
………どこ?
……視線をめぐらせば、俺のすぐそばに革靴をはいてる足がある。
おそるおそる顔を真上にあげたら、バーテンダーの格好をしてる人が、シェイカーを振っていて。
そのまましばらく観察してると、どうやら、どこかのバーのカウンター内に俺はいるようであった。
おさえられた音量で、流れるBGMといい、静かな話し声といい。
あまりやかましくない部類の店にいるとわかった。
まあ……個人的には、あまり来ない種類の店だな。
「起きたぞ」
ごそごそ動き出した俺をめざとく見つけた、その人が、小さく声をかけたら、少し離れたところから、一人の青年が歩み寄ってきた。
その子もバーテンダーの格好をしてた。
サラサラの茶髪は、なんだか一昔前の俺みたい。
……つか、俺もバーテンダーの役やったっけな……。
黙って見上げたら。
青年は、そのまましゃがんで俺の前にコトリとミルクの入った皿をおいてくれた。
「お飲み」
優しく微笑んで、皿をぐっと差し出される。
拾われたのかな、俺。この人に。
……捨てる神あれば拾う神ありだ。
とりあえず、どーするかは後で考えよう!
マジで腹ペコだった俺は、ペロペロとミルクを飲み始めた。
