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キラキラ

第31章 イチオクノ愛


優しい眼差しの子だった。

俺は、ちらちらとその子を見上げながら、ひたすらミルクを飲んだ。


……ふー、生き返る!


ほんとは、もっとガツンとしたもの食いたいけど、この際贅沢は言わないや。
のたれ死ぬところを、救ってくれたんだもん。

空になった皿の前で、ペコリと礼をしたら、そんな俺の仕草にくすりと笑ったその子は、俺の頭をそっと撫でてくれた。


「かしこいね、君」


俺は目を細めてそれに応えた。


……どうやらいい人に見つけてもらえたみたい。
やっぱ、俺ってもってるよなぁ……。

ありがとうね。

撫でてくれる手つきが気持ちよくて。
うっとりとしていたら、その子はホッとした口調で呟いた。


「良かった……なんか弱ってたみたいだけど。もう大丈夫そう」


「ササクラ」


ふいに、さっきシェーカーをふってた人が、静かな声で俺らを見た。


「はい」


目の前の子が返事をして立ち上がる。


ぶっ


俺は思わず吹き出しちゃった。



………はは…茶髪の人、ササクラっていうんだ。
俺のバーテンダーの役名と一緒って。これも運命かも??


ササクラと呼ばれた子は、神妙な顔をしている。

見た感じ、上司と部下もしくは、先輩と後輩という関係性っぽい。

先輩らしき人が、厳しい顔で俺をちらりと見た。



「そいつ、早くバックヤードに連れていけ」

「はい、すみません」


あ、俺?


「むこう行こっか」


ササクラくんが、俺に手を伸ばす。
抱き上げてもらうのを見上げて待っていたら。



「……そこ、なんかいるんですか?」


カウンターの外から、聞きなれた優しい甘い声がした。


…………え?


俺は息をとめる。

今の…………今の声!!?



「ああ……すんません。ササクラが、開店前に弱ってる子犬拾ってきて。目が覚めるまでって約束で、足元で寝かせてたんです」

「子犬……?」

「飲食店なのに、申し訳ない。すぐむこう連れて行かせますから」

「……どんな子犬ですか?」

「……柴犬……って言ってたかな?ぼく、あまりくわしくなくて」

「柴犬……?」


そのやりとりを聞きながら、俺はドキドキする胸をおさえることができなかった。

この声!

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