
キラキラ
第31章 イチオクノ愛
「ハルオが見つかったって、にのが知ったら喜ぶだろうなー。あいつ地味に落ち込んでたし」
しみじみと翔ちゃんが呟いて、コクっとグラスの中身を飲む。
…………にのちゃんが?
「また、逃げちゃった……って普通の顔してたけど、何気にあちこち探してたもんね」
「クールなふりして、そういうとこ不器用だからな……お、このハムうめー」
「でしょ。こないだ、共演した人からもらったんだ。翔くん絶対好きなやつって思って」
そのまま、仕事の話を始めた二人の会話を聞き流しながら、俺は苦しくなってうつむいた。
もうこんな姿、嫌だ……。
……にの……早くおまえのとこに戻りたい。
おまえを抱き締めたい。
犬って、やっぱ、すごく不便だ。
自分で動けないから、思うようにコトが進まないし。
自分の意思も伝わらないもん……。
ズズッと鼻水をすする。
なんでこんなことになっちゃったんだろ……。
つーか……それもこれも、ぜーんぶ、あの胡散臭い偽物のせいだよな!
明日には必ず、松潤がにのに連絡とってくれるはず。
もしにのがあの偽物と一緒だったら、あいつボッコボコにしてやるんだから!
今……今、おまえらが何してるのか、すごーくすごーく、気になるけど……!
胸をかきむしりたい思いで、じっとうつむいていると、それに気づいた松潤が、ふわりと俺の頭を撫でた。
「ハルオ、寂しいよな、にのんとこじゃなくてごめん。明日には連絡つくだろうから連れていってやるからな」
クゥ……
ありがと、松潤。
泣きそうになりながら、松潤を見上げたら、ソファーの翔ちゃんが目を丸くして、俺らのやりとりを見ていた。
「おまえ、ほんとに会話してるみてぇ……」
「だから、なんとなくだってば」
松潤は、ふふっと笑った。
そして、俺の体をそっと撫でて、それに……と続ける。
「なんでかな……なんかほっとけない雰囲気があんだよね、こいつ。なんか相葉くんに似てない?」
「そーかぁ?」
「うん、相葉くんって、どんなにしんどくても笑ってるとことかあるじゃん?たぶん、ハルオもすごーく無理していい子にしてる気がする」
「……犬だぜ?」
「うん、だからなんとなくだってば」
「……ふーん……」
翔ちゃんは、頬杖をついて、また静かにグラスを傾けた。
