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キラキラ

第31章 イチオクノ愛



ぐんっと体が伸びる感覚がした。
肩も腰も足も。
ゴムみたいに引っ張られた感覚。


そして、瞬きをした瞬間、今までと視界がガラリと切り替わった。
まるで、トンネルから抜け出た瞬間、一気にぶわっと世界が広がった感じ。


「……っ」


「えっ」



思わず息をのんだ俺の至近距離で、にのの驚いた声がして。

視線をさげたら、俺を抱きしめた状態のにのが……真ん丸な目で俺を見上げていた。
まぁ……正確には俺に抱きついてるといった方がピッタリかな……?



……だって。
……俺は今、犬じゃない。



目線が、高い。
足がある。
手がある。


「……に……の……?」


震える声。
声帯が……久しぶりに声を紡ぐから、なんだか喉が自分のものじゃないみたい。


「……相葉さん……?」


ぽつりとにのが呟いた。


「……うん。そうだよ」


こくりと頷いた。
……笑顔作れてるかな?
俺。


感激で叫びだしそう……!



…………戻れた……人に!!



「あ!お前!知ってるぞ!」


翔ちゃんが怒鳴った。
振り返れば、今まで俺の姿をしていた偽物が、様相をかえていて。

金髪に緑のヒラヒラした服の、まるでピーターパンのコスプレをしたような格好にかわっていた。


「……ゲームオーバーかな」


そいつは、てへっというように舌をだし、にっこり笑ってそんなことを口走った。


ゲーム……オーバー……?


呆然とそんな金髪をみつめる。
ゲーム?
ゲームって……?


「……最近の相葉くんおかしいなって、翔くんと話してたとこだったんだ……相葉くんの顔した別人だったってこと?」


松潤が、静かに言った。
すると、その金髪は、肩をすくめて


「……ふふっ。あたり」


と、イタズラっぽく笑った。

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