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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟


「ミヤ……ミヤ!!!」


飛び込んだ人混みを、なんとかかきわけて前に進もうと思うのに、行き交う人々に阻まれて、思うように動けない。

しかも、間の悪いことに、至近距離にある広場で、管楽器の生演奏が始まった。
陽気なトランペットやトロンボーンの音色。
それにあわせて踊る人々。

……俺の声なんか、簡単にかき消される。


「ミヤーーーっ!!」


半泣きで絶叫しても、喧騒が俺の声を消す。


微かに聞こえた。
確かにきこえた。


365日ずっとずっと一緒にいた男の声を聞き違えることなんかない。


カエラって誰?
俺はここにいるよ。

ミヤ。早く見つけて……!


自分の心臓の音以外、何も聞こえなかった。
目の前が暗い。
人の背中ばっかりで何も見えない。


ミヤ……どこ……


闇雲に人をかきわけてるうちに突如、視界が開けた。


もっと先に。
この先にミヤがいるかも、って俺はなにも考えずに飛び出した。



瞬間。


「姫!危ない!!!」


ものすごい力で突き飛ばされた。


石畳に無様に転がる。

それまで何も聞こえなかった耳に突如、ガシャーンと、何かがひっくり返るようなものすごい音と、悲鳴が飛び込んできた。

はっと、我に返った。


広場中が、水をうったように静まり返ったのがわかった。


からから……とひっくり返ってる荷台のタイヤが乾いた音をたててる。


興奮した馬の嘶く声が、響き渡った。


永遠にも続きそうな沈黙のなか。
震えながら体を起こした俺の目に、誰かが倒れてるのが飛び込んできた。


ついさっきまでそばにいた茶色のジャケット。

柔らかな黒髪に白い陶器のような肌。

……その体から赤いものが流れ、石畳にたまってゆくのがみえた。



「……ジュ……ン……?」


ひきつったような声しかでない。

……ガクガクと体が震え出した。


「おい、あんたら大丈夫か?!」
「医者は!!誰か医者を呼べ!」
「あなた怪我は??大丈夫?!」
「兄ちゃん!しっかりしろ!!」


雨のように降り注ぐ怒号。


……なに……?
何がおこったの……?


俺は、ピクリとも動かないジュンに、手を伸ばした。


ジュン……?

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