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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟


まさか、と思っていた光景が目の前に現れて、思わず息をのんだ。


「ジュン……ジュン……!しっかりして……!」


泣きながら、倒れている人物を揺り動かそうとして、まわりにとめられてるのは……姫。

一方、ピクリとも動かず血だらけで横たわるのは……ジュン……なのか?



「サト……サトコさま……!」


大股で駆け寄ると、涙に濡れた顔で俺を見上げた姫は、その表情をくしゃっと歪めた。


「ショウ……」

「一体何が……!」

「……ごめっ…俺がっ……俺が飛び出してっ…」


サトコさまは、俺にしがみつき首を激しくふって再び泣き出した。
号泣してるせいで、一部何を言ってるかわからないけど、言わんとすることは理解できた。

小刻みに震える背中を擦りながら、彼女の体を確かめる。


「お怪我は……っ?」

「俺は大丈夫っ……ジュンが……俺を庇って……っ!」


むせびなくサトコさまの手を握り、ジュンに目を向けた。

うつぶせ、力なく投げ出された手。
何人かが、ジュンの応急処置をしてるようだった。


「倒れてる方のお知り合いですか……?」


かっちりした服を着た男性が、声をかけてくる。
商売人でも、警護の人間でもなく。
一目で城の関係者だと分かった。


「申し訳ありません。彼に接触したのは、我々王室の車です」

「……はい」

「お詫びといってはなんですが……医者がおりますので、城にお連れしたいのですがよろしいですか」


思わず姫を見た。

身分を隠して入国してる俺たち。
だが、もうこうなってはきっと隠しきれない。
それは、大の国にも知らせがいき、場合によっては連れ戻される可能性もあるということ。

だけど……このままだと。


「はい……お願いします」


俺の胸にしがみついてる姫が、くしゃくしゃの顔で頭を下げた。

俺は、キリ……と、痛む胸をおさえ、同じように頭を下げた。
ミヤ探しは、ここまでだ、と思った。

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