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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟


カエラは次々と出店をのぞいては、楽しそうに俺に説明をしてくれる。

薔薇祭りとあって、薔薇にまつわるものが数多くあり、興味深かった。
ローズオイルなんかは、サトコさまにお土産にしたかったくらいだ。

加えて、カエラを知ってる国民が、気さくに話しかけてるのも、また新鮮であった。


「カエラさま!これ食べていってー!」

「えー、くれるの?ありがとー」


…………。


大の国の王族の人々は、真面目な人間が多いせいか、こんなにフランクな対応はしない。
大きな口で、楽しそうに笑うカエラは、その表情に嘘偽りなく、国民も本当に慕っているんだなということが見てとれた。


「カズ。はい、これ」


渡された焼きたてのクロワッサンは、あたたかく
香ばしいいい香りがした。


「…………」



歩きながら食べるなんて行儀悪いことしたことないから、戸惑ってしまう。
だけど、悪びれもせず、横でクロワッサンをかじりながら鼻歌をうたってるカエラを見てたら、まあ……いいか、と思い、サクっとそれにかじりついた。

甘くて、あたたかくて。

なんだか、この国に来て、初めて「美味しい」と、思えた。

難しい顔をしてたのか、黙ってる俺に、カエラは、心配そうに、


「……美味しい?」


と、聞いてきた。
俺が頷くと、嬉しそうな顔で、前方の人混みを指差す。


「もうすぐさ、演奏がはじまるのよ」

「なんの?」

「ダンスできる曲とか。いろいろしてくれるの。あっちの広場よ。行こう!」


……主語がないぞ。

心でつっこみながら、走り出したカエラを一瞬見失いかける。
想像以上の人混みだから、迷ったら困ると思った俺は、クロワッサン片手にあわてて追いかけた。


「待って!カエラ!」


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