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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟


ちょっとした広場で、管楽器の演奏が始まった。

愉快なトランペットの音色に、その場にいた人が、みな踊り出す。
祭りにふさわしく、心踊るうきうきした曲調に、俺もなんだか楽しい気分になってきた。

カエラは体全体でリズムをとって、楽しそうに体を揺らしてる。


カーニバルだな……まさに。

大の国ではあまりしたことがない体験だ。

国民が一体となって楽しんでるのを見るのは、王室にとってとても嬉しいことで。
きっと、カエラも本当に心から楽しんでるのだろうな、と、思った。

トロンボーン奏者のスライド管を操る様に、思わず見とれてしまってた……


その瞬間だった。


ガシャーン!!!


演奏が一瞬とまるほどの、すさまじい音がした。


思わず心臓がドキリと鳴る。


え…………?


周りを見渡せば、混雑した人並みのずっと向こう側 が騒然としてる。
馬の嘶く声もしてる。
興奮状態だ。


なに…………?


「……なにかしらね」


カエラも、瞳を揺らし、不安そうにざわめく人々をみている。
しばらくして、


荷馬車がひっくり返ったぞ!


と、誰かが怒鳴る声がした。


怪我人もいるぞ!誰か手伝えるやつ来てくれ!!


と、いう声もした。
状況が状況だけに、演奏チームも止まったまま、心配そうにそちらを見つめてる。
踊っていた人々も、不安げな顔で立ち尽くしてる。

この状態で、演奏続行は憚られた。
落ち着くまで、様子を見ることになるだろう。

カエラは、その場を離れることにしたようで、静かに俺を促した。


「警備にお任せしましょ。私たちには、見ることしかできないもの……」

「ですね……」


そのまま、祭りを楽しむ気にはなれず、俺たちはそっと馬車に戻り、そのまま城に帰った。



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