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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟


「……そうか?」


ショウが、まじまじと自分の手元を見る。
そして、炒り卵……否、キッシュの山を、フォークでかき集め、


「刺せるさ、ほら食えよ」


と、サイドのテーブルに、ことんと置いてみせた。

そのどや顔は、どこからくるのか甚だ疑問だし、まず間違いなくフォークでなんか食えたものではない気がするが……ひとまず体を起こした。

一言でいうと簡単だが、この体を起こす作業も、今の俺には一苦労。左腕だけで、四苦八苦してるのを見かねたショウが、腕を添えてくれる。

礼をいって、フォークを左手にとる。


「……」

「……」


まぁ、予想通りだ。
バラバラのキッシュは、慣れない左手のフォークなんかで掬えるはずもない。

ちらりとショウをみたら、あれ?という顔をしてる。



あれ?じゃ、ねーだろ。
これじゃあ無理だっつの


それでも、彼の優しさに応えるべく、欠片ほどを口に運んだ。

チーズの香りがいい。
卵の優しい味が体に染みる気がする。

美味しいな、と素直に思った。

でも。



「うまいだろ?」

「ああ……」

「……って。なんでフォーク置くんだよ」

「無理。スプーンがいるぜ、これ(笑)」


小鳥が食うほどの量ずつしか掬えないのに、これ全部食おうと思ったら何時間かかんだよ。
こんなん罰ゲームでしかねーし。


なんて、悪態をつこうとしたら、


「世話かかるやつだな」


ショウがおもむろにその皿を手にとり、フォークで山盛りに掬いとった。
そうして俺の口元に持ってきたから、ギョッとする。


「は?」

「口」

「いや……なに?」

「口。開けろよ」


ショウが真剣な目でフォークを見つめながら、命令してくる。


……所謂、あーん。


「……」


……いや、落とさないように真剣なのだろうが、俺の顔もみてくれ。

冗談だろ?と書いてるつもりだけど。

子供じゃねーんだぞ。


俺は、思わずふるふると首をふる。



「……え……いやだ」

「つべこべ言わずに、ほら。こぼれるじゃん。ほら!」


ショウが苛立つように急かした。

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