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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟


ジュンは自嘲気味に肩をすくめた。


「俺さ……姫にキスしたんだ」

「え」

「……あの人があまりにも自分を責めるから、じゃあキスしてっつったらしてくれて……つい」

「……そうか」


自分も泣きじゃくる姫を落ち着かせるため、とはいえ、キスしたことを思い出す。
でも、なんだか黙っていたくて、俺は言葉を飲み込んだ。


「でもな……彼女すっごい震えてんの」


そのときのことを思い出すように、ジュンはふっと笑う。


「俺のやることひとつひとつが、彼女の負担になってるなら……なんだか逆に辛くてさ」

「……でも、好きなんだろ?」

「好きだよ。愛してる……でも」


そこまでいってジュンはうつむいた。


「ミヤが王子って……つまりあいつが、俺らと同じ土俵にあがってきたってことじゃん。今まで、あいつより唯一有利だったのは、俺らの身分じゃん?」


……そうなのだ。
それは俺も思っていた。
結婚、ということに持ち込みたい俺たちが、唯一ミヤより有利なのは、この皇太子という立場。

使用人のような付き人が、一国の姫と結ばれることなんかないと思っていた。
身分違いの愛は、報われない、と。

それなのに話が違ってくる。
勝ち目 が……なくなってくる。


「いつでも偽りない気持ちでいたいけど……怪我のせいかな……なんか今はそれが辛い」


言って、俺を見上げる目は、頼りない。
そういや、こいつは俺より年下だったな、と今更ながら思い出す。

俺は、そうか……と呟いて、兄貴のようにジュンの頭をぽんぽんとしてやった。

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