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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟


手渡されたその封書を凝視する。
これの意味するところはなにか。


俺が何も言えずに黙っていると、


「お二人からです」


マリウスがやんわりと報告してくれる。


瞬間、俺はその封書を握りしめ、身を翻して外に走り出ようとした。
優しいあの二人の姿を追うつもりだった。

ところが、この背の高い優秀な男が、俺のやることを予想していたかのように、すっと行く手を阻む。

その体にぶつかりかけて、咄嗟に踏みとどまった。
俺は、イラっとして、マリウスをにらみつけ、命令する。


「どきなさい」

「……サトコ様」


マリウスの無表情な顔に、爆発的な怒りが沸き上がった。


なんだよ、その顔!
ムカつくな!!


「どけよ!!」


たまらず一喝したら、


「無駄です。お二人とももう暗いうちから出発されてます」


冷静にバッサリと切られた。



出発……


俺は呆然としてその場に突っ立った。


なに……?俺……置いていかれたの?


しんとした空間に俺の鼻息だけが響く。
ドキドキしている心臓の音が、頭にまで響いてきた。
ガンガンして目の前までが、チカチカしてくる。


「……どうか落ち着かれて、その手紙をお読みください」


マリウスが静かに促す。
初対面のときも蝋人形みたいだと思ったけど、やっぱり蝋人形だと思った。


その無表情すげー腹立つ……。


俺は封書を握りしめていた手のひらを、しぶしぶ緩めた。

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