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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟


複雑な想いを胸にしまい、そのまま三人で街を歩く。

そこはいい大人なのだから、俺だって心得てる。
負の感情は封じ込めることにつとめ、ミヤとも普通に接した。

カエラの、すぐに仲直りしたならべつにいいわ、というスタンスなのもありがたかった。
喧嘩の理由までつっこまれたらめんどくさい。


「いー天気」


空を見上げて笑うカエラに、そうね、と頷いた。


ほんと……いい天気。


穏やかな日差しの中、石畳をのんびり歩いてると、こないだまでの悲壮感に満ちた自分とのギャップに、すこし戸惑う。


目的が叶って。ミヤがそばにいて。
幸せなはずなのに、スッキリできない状況は、正直辛いな……。

ため息をのみこみながら、笑顔をつくった。

それからも、カエラがあちこちの店で呼び止められては、いろんなものを買って俺たちに振る舞ってくれる。

そのうちに、なんだか何もしないのも申し訳なくなり、俺も母上にお土産を買うことにした。


「なに買うの?」

「……近々帰ろうと思うので母に。なにかおすすめのものってある?」


黙って国をでてきてしまってから、何一つ連絡をよこさない娘を、家族はどう思ってるだろうか。
唯一、ジュンイチにだけ置き手紙をしてきたけど。

しょうがない子ね、とあきれてるだろうか。



「うーん……そうね。香水なんかどう?」


ローズオイルなんかもオススメだけど。
いいながら、カエラはキョロキョロして店の選別を始めた。

カエラと二人歩き始めたら、ミヤが別の店を指差した。


「カエラ、私はあそこのローズウォーターを買ってきます」

「ん。わかった。あの赤い屋根の店にいるね」


いって別行動をとりかけたら、カエラが再び別の店につかまる。話好きなおばさまのようで、カエラはにこにこ頷きながら俺に目配せした。


先に行っとけってことかな……。


俺は小さくうなずいてカエラのいう店に一人で向かった。

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