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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟


赤い屋根の店……ここかな?


Perfumeと書かれた小さな看板がでてる。
店の外までただよってくる、甘い香りにうっとりしながら、木でできたその扉をそっと押そうとしたら、


「あのう……もしもし」


不意に後ろから男性の声によばれ、振り返った。



「ああ……やはりあなただ。探していたんです」

「え……?」


背の高い、狐のような目つきをした男が俺の真後ろに立っていた。

思わず一歩後ずさった。

手を伸ばせばすぐに届くそいつとの、その距離感に、一瞬背筋が寒くなる。



誰……?



……この顔に全く覚えはない。

身につけてるものといい、身だしなみといい、お世辞にもよいものとはいえず。
言っちゃあなんだが、俺の知り合いにはいないタイプだ。
仮に忘れていたとしても、すぐに思いだせるほどの特徴で。


……俺は瞬時に警戒レベルをあげた。


もう一歩さがり、さりげなく距離をとりながら、首をかしげつつドアに手をかけた。



「……すみません……お人違いでは」

「いや、先日薔薇祭りに来てましたよね?」

「……それがなにか?」

「店をしてる僕の知り合いがあなたにもう一度会いたいっていうんで、ちょっと来てもらえませんか」

「……は?……え、ちょっ……」


やにわに右手を握られ手を引かれる。
振り払おうとしたが、ものすごい力でびくともしない。


「人違いでしょう?!私はあなたを知りません!」

「来れば分かりますから」



なにいってんだ、バカかこいつは!


心拍数が急にあがった。
ヤバイ、と頭の中に警鐘が鳴る。

握られた腕が気持ち悪い。


またよりによって、エアポケットのようにこの瞬間この周りに人がいない。

常に誰かと行動を共にしていた俺は、一人になったのはそういえば初めてで。
必要以上にジュンたちが心配してくれていたのが、今になって分かる。

この国の王族じゃないんだから、皆が俺を知るわけねーんだ。


「離せっ……!」

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