
キラキラ
第33章 🌟🌟🌟🌟🌟
陛下は、優しく首をかたむけ、俺に聞く。
「大の国から何かご伝言があるとのことですが……?」
「あ……それは」
嘘なんです。
と、小さくいったら、陛下の目が軽く見開かれた。
だよな。
ごめん。
俺は、緊張でかさつく唇を引き結び、その茶色の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「……どうしても陛下にお願いしたいことがあって。失礼を承知でうかがいました」
「……姫君から、いったい私になんの願いでしょう?」
あきれる風でもなく、優しく続きを促してくれる口調に勇気づけられながら、俺は思いきって口を開く。
「タクヤ様と……タエの結婚を認めていただきたいのです」
「……タエとは、最近あれが連れてきた女性のことかな」
陛下は、髭をさわりながら少し考えるような顔で
遠くを見た。
「そうです。タエは……私の国で、ずっと母上についておりました。私の乳母でもあります」
「……ほぉ」
「人としての質も、女性としての気遣いも、完璧な人です」
「…………」
「だから……」
「年は」
陛下が俺の訴えに割って入った。
「子供は…その者は世継ぎは産めるのか?」
俺は、ギクリとして口を閉じる。
…タエの年齢は、子供を宿すには少し厳しいかもしれない。
黙った俺に、陛下は一国の主の顔になった。
「あれは長男で、この国の跡継ぎだ。世継ぎを産めない女性は……私は主として認めるわけにいかない」
「…………」
「……養子とか」
「……本気で言ってるのかね?……ならばもうお話することはない」
陛下が立ち上がりかけた。
この話は、終わりだと切られたも同然の対応に、俺は心臓をつかまれた気分になる。
俺は拳をギュッと握りしめた。
ミヤの笑顔が脳裏に浮かんだ。
もはやこの選択肢しか残されていなかった。
ミヤ……
ごめん。
俺は震えながら、言った。
「……タエとタクヤさまの間には、既に息子がいます」
陛下の動きが止まる。
「……昔。あれが若い頃に手を出して子をつくった町娘がいたというが」
苦い記憶とでもいうような顔。
そんな顔……やめてくれ。
俺の大事な人たちなのに。
泣きたいのを我慢して、俺は頷いた。
「そうです。それがタエです」
「……そのものは生きとるのか」
「生きてるも何も。……今、この城にいます」
