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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟



考えれば考えるほどドツボにはまりそうで。


「……紅茶……飲みたいな…」


ざわざわし続ける気持ちを、少しでも落ち着かせようと、テーブルの上に目をやった。

マリウスがセットしておいてくれてる、真っ白のティーポットと、カップ。
紅茶の茶葉もある。

ただ、お湯は、そのたびに声をかけてくだされば持っていきます、とのことだったから、ここにはない。

俺は涙をふいて、立ち上がり、ガラスのベルを手に取った。

カラン……と、綺麗な音色がなる。

マリウスは耳がいいからこれくらいの音でもすぐに飛んできてくれる。

ご用があれば、いつでも鳴らして呼んでください、と渡されたベルだが、申し訳ないから、あまり使うことはなかった。

でも、今はどうしても温かい紅茶が飲みたかった。


ほどなくして、コンコン、と、部屋の扉をノックする音が聞こえた。


「……いかがされましたか」


扉を細く開けると、マリウスが、ピシリと姿勢よく立っている。


「あの……ごめん。お茶が飲みたくて。自分で入れるからお湯欲しいんだけど」

「かしこまりました。すぐお持ちします」


どう見ても、泣いてたんじゃないかという赤い目の俺の顔をみても、眉ひとつ動かさない彼は徹底してる。
つっこまれたくない俺は、こういうタイプの人間はありがたかった。



ソファーでぼんやりしてると、再びノックの音。


俺は、のろのろと立ち上がり、ありがと……と、呟きながら扉をあけた。


「……っ」


心臓がとまった。


な……んで……?


そこには、お湯の入ったポットを手にしたミヤが無表情に立っていた。


「……お待たせしました」

「ミ……ヤ……」


マリウスに頼んだものを、何故ミヤが?

とたん呼吸が、苦しくなり、泣きそうになりながら、何も言えなくて黙ってると、



「入ってもよろしいですか」


いいながら、ミヤは、無表情のまま体をねじ込んできた。

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