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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟



「……ちょっと待っててくださいね」


ミヤは、泣きすぎてフラフラな俺をゆっくりソファに座らすと、一度部屋の外にでていった。

そして、沸かしたてのお湯じゃないと、と言いながら、もう一度用意してきたお湯と、どこからか持ってきた茶葉で、俺のために紅茶を入れてくれた。


嬉しい……


どうぞ、と渡されたカップを手に、俺は胸がいっぱいになる。

この国を旅立つ前に、もう一度ミヤの入れた紅茶が飲みたいと思っていたから、ものすごく嬉しい。

カップに口を近づけると、清々しいマスカットの香りがして。


「……おいし」


誰がいれたものより、やっぱりミヤの紅茶が一番だと思った。


体にじんわりと染み込んでゆく感覚をゆっくり味わってると、フワフワしていた気持ちも、落ち着きを取り戻してくる。


「大の国から持ってきたダージリンです」


ミヤが事も無げに言って、自分もコク……と飲んだ。




カップが空になるころには、かなり落ち着いていた。

俺は、顔をあげ、静かにミヤの目を見つめた。



「……ミヤ」

「……はい」

「……俺はね、お前の一番でありたい」

「……いつでも一番ですが」

「ありがと」


何を今さら、というように不満そうな表情をしたミヤに、俺は、ふふ……、と笑った。

だけどさ。



「でもね、同時に母親も大事にしてほしい」

「…………」

「さっきも言ったけど。状況がお前を必要としてるんだから、今は……ここはこの国に残るべきだと思う」

「…………でも」


反論しようとしたミヤを遮る。

聞いて。
俺の決断。


「わかってる?お前王子になるんだぞ?」

「そんな地位いらない」

「……違うよ」


俺は、ティーカップをそっとソーサーにもどし、傍らの仏頂面のミヤの手を握った。


「何年かして、落ち着いたら。……きっと俺を迎えに来て」

「……それはどういう……」

「俺をお嫁さんにして」



ミヤが、目を見開いた。

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