
キラキラ
第34章 バースト9
その気色の悪い感覚に、俺は戸惑う。
まったく見たこともない相手からの、明らかに敵意を含む目に。
「……なんですか?」
俺は思わず問いかけずにいられなかった。
山下さんは、
「あれぇ?ミズキ知り合い?」
と、驚いている。
すると、そのミズキと呼ばれた女子学生は、視線を俺からはずさずに
「……泥棒」
と、吐き捨てた。
泥棒……
「…………?」
……は?俺?
静かに紡がれた言葉が、全く予期してないワードすぎて、ぽかんとしてしまう。
少なくとも、17年生きてきて、俺は不良、と呼ばれたことはあっても、泥棒呼ばわりされたことなんか、ただの一度だってない。
それをいきなり出会った女学生に言われるって……?
怒りというより……意味がわからない。
「あの……?」
「行こう。トモくん。泥棒だから。この人」
そういって山下さんの腕をとって、歩いていこうとするから、慌てて呼び止めた。
「すみません。あの……俺、初対面ですよね?なんで……」
「え……ミズキ?この子……悪い子にはみえないけど……」
山下さんも戸惑うように俺を振り返る。
ミズキは、俺を、いっそう憎々しい目で睨み付けて、言った。
「この人、大野くんをたぶらかしたの。大野くんはヨウキの彼氏だったのに」
「…………?……え?」
大野くん……翔のこと?
え?ちょっと待てよ。
「大野くんに色目使うなんて」
「…………あの」
「キモ」
「…………」
「どうして、大野くんはこんな男がいいんだろ。謎」
一切身に覚えがないことだから。
はっきり、意見を言おうとしたけど、最後の一言に……息をのんだ。
「…………」
知らず鼓動が早くなる。
俺の顔が強ばる。
「……ちょっとミズキ?なにいってんの、お前」
たまりかねたように、山下さんが割って入った。
「いーの。いこ」
ミズキは、山下さんの手を引っ張って歩いて行く。
山下さんは、え?え?というような顔で俺を振り返りながら、行ってしまった。
