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キラキラ

第34章 バースト9



「……う……っ」


瞬きした瞬間、空気はがらりと変わった。

人混みの喧騒が消えて。
屋台などからただよってきていた美味しい匂いも消えて。



ここ……どこ……だ……?


霞む目をこじ開け、焦りながら周りを見渡そうとするが、くらくらする頭を支えきれず、膝に手をあて、前屈みになり呼吸を整えた。


チカラを制御できないパターンで瞬間移動してしまうと、体力、精神力を大きく削られる。

しかも、自分の意図せぬ場所に跳んでしまうから、面倒なのだ。
誰かに目撃されてもややこしいし、身の危険を感じるような所に跳ばないとも限らない。

突発的な暴走には気をつけてるはずなのに……まだまだ修行不足だな、と、思う。

いくら、ショックだったからって、こんな簡単に跳んでしまうなんて、我ながら情けない。


「…………?」


必死で現状把握に努めた。

すると、すぐに、適度にがやがやしたこの感じが……よく知ってるものだということに気づく。

匂いも。
声……も……



「あれ?!松本!お前いつ来た?」


振り返ると、暗幕を手にした生田が、真ん丸な目になった。
その声に呼応して、それぞれが作業していた手をとめたクラスメートが、物珍しげに俺を見てるのが分かった。


学校だった。


今日は日曜日ではあるが、来週の文化祭の最終準備に、作業したいクラスは午前だけの登校が認められていた。

俺は、翔の学祭もあったし、ちゃんちゃら来る気はなかったんだけど……。


「やっぱり気になって来てくれたんだな!」


生田が嬉しそうに俺の肩を抱いた。


「てか、お前私服って……制服来てこいよ」


つっこまれて、俺は曖昧に笑った。

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