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キラキラ

第34章 バースト9


嬉しそうにニコニコする生田を前に、ここにいる本当の理由なんていえるわけもなく。

さらには、この疲弊した精神力で、もう一度翔の大学まで戻れる自信もなく。

さっきの噂話で、さがったメンタルを抱えた俺は、判断力も低下していて……。

なんだか、もう何もかもどうでもよくなり、俺はこのままお化け屋敷の製作現場に残ることにした。



……ごめん、急用思い出したから帰るね。


翔には、一言だけスマホにメッセージをのこし、電源を落とした。


こんなことしたら、翔は心配するだろう。


でも、今、彼の前で、なんでもない顔をする自信もない。

もちろん、なんでもない顔なんかしなくたっていいのだ。
見知らぬ女子学生に、いきなり泥棒呼ばわりされた俺は、翔に詰問する権利はあるはずだけど、なんだかそれも嫌だった。

100%、翔には、なんら後ろ暗いことなんかないことなんて、わかってる。
分かっていても……翔が女性に人気のあるところを目の当たりにすると、面白くないんだ。


「なーなー、見ろよ。この生首。すげーだろ」


ふいに目の前に、ゾンビのように崩れた顔の首が現れ、息をのんだ。
血糊が妙にリアル。

生田は、生首のボサボサの髪の毛を鷲掴みにして俺の目の前でぶらぶらさせてる。

ごみ捨て場で拾ってきた人形を細工したらしい。


「……趣味わりぃな」


俺がぼそっと言ったら、生田はニヤリと笑った。


「でも、お前今ビックリしたろ?」

「してねーわ」

「いや、したね!」

「してねーっつの」


言い合いしてても、クラクラがおさまらず、どんどん立ってるのが辛くなり、俺はその場にゆっくりしゃがんだ。
さりげない動作のつもりだったのに……生田が、何かに気づいたかのように、生首を抱えたまま、眉をしかめ俺の隣に一緒に座る。

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