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キラキラ

第35章 屋烏之愛


はっ……?

上田が、なに呼び止めてんだ?とでもいうような驚きの声を小さくあげた。

目の前を通りすぎようとしてる三人は……櫻井が立ち止まり、大野と菊池は、そのまま無視をして歩きかけた歩を、少しだけ緩めた。

櫻井は、その大きな瞳を少しだけ和らげたようにみえた。
俺は、その様子に励まされるように、


「こっ……こないだは、ありがとうございました!」


と、お礼を言った。

そんな俺に、大野は、ちょっと口角をあげたみたいだった。
菊池はふいっと目をそらしたが、小さく頷いたのがみえた。

櫻井は、俺の首のテープをつとなぞり、

「もう大丈夫か?」

と、呟いた。


隣で、上田が息をのみ、俺を守るように一歩前に出る。
その様子に、櫻井が余裕の笑みとともに肩を揺らす。


「……なんだよ、上田。そんな警戒しなくたって。なんもしてねぇだろ」

「…………そんなの……信用できない」


言いながら、上田が臨戦態勢に入りかけるものだから、俺は焦って上田の腕を引っ張った。


「違います……!」

「なにが違うんだよ。こいつに触られてんじゃねぇかよ」


上田が口を尖らせて、櫻井を指差す。


「あのっ……」


弁解しようとしたら、櫻井は少しだけ肩をすくめ、俺らを無視して歩きだした。

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