
キラキラ
第35章 屋烏之愛
「おい、まてよ」
上田がなおも櫻井に声をかけ、その肩を掴もうと伸ばした腕は、一瞬早く、横から別人の腕によって遮られた。
「…………うちのに何すんだ?」
静かな静かな……だけど、氷のような冷ややかな声が至近距離で、した。
ドキリとして、そちらをみる。
すると、無表情の大野が、上田の手をつかんでじっと見つめていた。
睨んでいるわけではないのに、傍から見ていてもその視線は背筋が寒くなるほどで、俺は思わず息をとめた。
しかし、そこはさすがの上田も負けてない。
大野の手を振り払い、顔をギリギリまで大野に近づけて、
「……そっちからしかけてきたんだろうが……」
と、凄んだ。
いや……いや!
ちょっと待って!
俺は上田の手を必死に引っ張り訴えた。
「違う!上田先輩。誤解なんです!」
「……智くん、大丈夫だよ?」
櫻井が、ため息をついて、俺らから離れて行く。
大野は、最後に、底冷えするような一瞥をくれて、櫻井を追うようにそのまま歩いていった。
遠ざかる三年生を見つめ、上田は、舌打ちしてる。
俺は、松本のグループと大野のグループが、仲が悪いと知っていたのに、彼らを呼び止めたことを後悔していた。
俺に向けてくれたあの三年生の笑顔は、一切みられなかった。
