
キラキラ
第35章 屋烏之愛
大野たちの後ろ姿を忌々しげに睨み、上田は俺に向き直った。
「おまえさ、潤のものなんだろ?簡単に他人に触られてんじゃねぇよ」
「……はい」
触られたんじゃなくて、心配された、が、正解なんだけど、この様子だとどんな言い訳も聞いてもらえそうにない。
俺は素直に、すみません、と、頷いた。
上田は、あー、もう……と後ろ頭をガシガシかいて、俺をちらりと見た。
「お前になんかあったら、俺、潤に殺されるわ」
「……でも、あのときの櫻井さんは、そんな悪いことする雰囲気じゃなかったですよ?」
おそるおそる、少しだけフォローしてみる。
だって……数日前、俺の肘に絆創膏を貼ってくれたあの不器用な手つきをもつ天然な表情も、間違いなく櫻井だ。
あのときのあの三人は、普通の先輩だったもん……。
すると、上田は、けっというように吐き捨てた。
「あいつらはそんないいやつじゃねぇわ。騙されんな。特に大野には」
「…………そう……ですか」
俺は、それ以上言うのをやめた。
あの一触即発な雰囲気は、確かに普通ではなかったけど。
上田が喧嘩っ早いのは分かってるが、大野は、やっぱりリーダーなんだな、と思った。
柔らかな笑顔もできるくせに。
……あの道端の石ころでもみるような、興味のない冷たい視線に、背筋が冷えたのは確かだ。
二つのグループの過去に何があったのだろう……。
