テキストサイズ

キラキラ

第35章 屋烏之愛


男ばかりの校庭は、むさ苦しくて暑苦しい。
そして熱い。

プログラム一番の、100メートル走から、われんばかりの声援が飛び交い、俺ら一年生はちょっと戸惑う。


……え……なんでこんなに盛り上がるの?


しかし、よくよく聞けば、優勝チームには学食のタダ券が配られるとのこと。

なるほど。斜に構え、一生懸命がカッコ悪いなんて思うことが増えるお年頃の男子学生を釣るには、絶好の商品だ。
加えて、学年をこえて、生徒同士の交流が深まるのも、この行事がきっかけなことが多いらしい。

いいことなんだろうなぁ……と、自席から競技をみていると、ひときわ早い影が目に入った。
ゴールテープを切ったのは……


菊池さんだ……


あの人らも出るんだな、こういう行事に。

遠目からは、同級生からハイタッチを求められて、少し笑って応じてる。

こないだの仏頂面からは想像もつかないような顔だ。
というか……あの屋上での、優しげな顔だ。
あれが素なんだろう。

やっぱり、あんな冷たい雰囲気になっちゃうのは松本たちの前だからなんだろうな……。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ