
キラキラ
第35章 屋烏之愛
借り人競争とは、走っていった先のカードにかかれた条件にあった人を、探して一緒にゴールするというシンプルな競技だ。
これは、全学年シャッフルで行われる。
第一グループが走り出すのを、待機場所でぼんやり見つめてると、俺の斜め前に座ってる人が、くるりと後ろをむいた。
「……あれから何もない?」
ちょっと心配げな顔で聞いてくる彼は、確か。
「……知念先輩」
俺がトイレで、アザの上に傷をつくってるのを見た人。
大丈夫、というのは、かつてのやつらに、再び嫌なことをされていないかどうか気にしてくれているのか。
主語がないのは、周りの耳に配慮して、なのだろう。
「……はい。ありがとうございます」
今にして思えば、知念は、相葉や松本に疑われる立場に立たされ迷惑をかけたな、と思う。
あのときはすみませんでした、と小さく言ったら、
「気にしないで」
と、にこりと笑われた。
ちなみにこの人も大野一派だと聞いたのは、数日後。
優しいくせに、この人も怒らせたら怖いんだろうか。
