テキストサイズ

キラキラ

第35章 屋烏之愛


スタートした知念が、カードを手にしたのち、猛然とダッシュしたのは、三年生の応援席。
そこにとびこんで、しばらくたって連れ出されたのは。


……大野。


ある意味、学校の有名人でもある彼がグランドに出てきたとたん、どよめきがおきる。
よりにもよって、ヤンキーのリーダーが、こんな企画に引っ張り出されるなんて誰も思ってなかっただろう。

めったにみられない体操服姿の大野は、めんどくさそうに眉をしかめてた。
でも、知念が最高の笑顔で、大野の手をとって走って行く。
大野も仕方なく走り出した。

細くて小柄な二人は、走るのもめちゃめちゃ早くてあっという間に、審判の前にたどりついた。

審判役の体育委員たちが、マイクを使って条件をよみあげる。


『条件は……イケメン!はい、オッケーでーす!!』


響き渡った声に、グランドが再びどよめいた。

知念は片手でガッツポーズをして、苦笑してる大野と共にゴールしていった。

確かに、大野は綺麗な顔立ちをしてるから、イケメンだけれども。
あの大野を連れ出せる知念が、すごいと思う。


……というか。
なんだ、その条件。
普通に、出席番号一番の人とか、眼鏡かけてる人、とか、分かりやすい条件ばかりじゃねーの??


俺はいっきに不安になった。


イケメン、みたいなやつがでたらどうしよう……。

スタートラインから、お題がかかれたカードまでの距離が、とてつもなく遠くみえた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ