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キラキラ

第35章 屋烏之愛


パーンというピストルの音ともに、台に向かってかけだした。

どうか簡単なお題でありますように!と、祈るような思いでカードにとびついて目を走らせた。


「……え」


…………マジで??!


だが、そこに書かれてあった内容に、俺は思わずその場にへたりこみそうになった。


なんで、よりによってこんなカードひいちまうんだ!


稀に何枚か、面白いお題が入ってるとは聞いていたけれど、きっとこれがその中の一枚だろう。


俺は頭を抱えたい思いで、立ちすくむ。


できねぇ……こんなの。


ぐるぐる考えてる間も、周りの選手は、左利きの人ー?だとか、名前に山がつく人!だとか、わーわー言いながら散ってゆく。


どうしよう……


全校生徒が見てる前で、お題をかえるなんてそんな堂々と不正はできない。
俺は、とりあえずその場から動かないと、と思って、歩きだす。

のろのろではあるが……歩みは自然と、二年の応援席に向かっていた。

だって、こんなの……困るけど、棄権なんかできないし。
お笑いに走って、適当な同級生とか連れ出しても、あとが恐ろしいし。

俺は、いろんな事態を想定するに、一番の最善策をとらざるをえないことも分かってた。


好奇心に満ちた二年の先輩軍団が、近づいてゆく俺を見つめてる。

俺は、ドキドキする想いを胸に、自分にいろんな言い訳をつけながら、その集団の中から、一人の人間の姿をロックオンした。

相手もじっと俺を見つめてる。
半分面白そうに。半分心配そうに。

人波をかきわけ、そばまで歩いていくと……松本は、にやりと笑った。


「……俺を連れていこうとしてんの?」

「……はい。お願いします」


手にしていたカードを見せた。

たちまち嬉しそうな笑顔になった松本は、立ち上がり、俺の手をとった。


「走るぞ!カズ!!」

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