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キラキラ

第35章 屋烏之愛


風のように走る松本の後ろを、必死でおいかける。
いや、むしろ、手を繋いでるから、これは引っ張られてるといった方が正しいかも。

大体、松本に比べ、そもそもの足の長さが違うんだから、倍近く足を動かさないといけない俺は、審判の体育委員の前についたころには、息も絶え絶えだった。


「カード確認しまーす」

「はい……」


手汗でよれよれのカードを、体育委員に差し出した。

体育委員は、ちらりとそれに目をおとし、にやりと笑って、マイクに向かって高らかに叫んだ。
まるで、大当たり!のテンションだ。


「お題は……自分が女だったら、彼氏にしたい人!!……オッケーでーす!!」


グランドがどよめいた。
ヒューっと誰かが口笛をふいた。

俺は頭が真っ白だ。


終わった……
自ら全校生徒の前でコクってしまった……
恥ずかしすぎるわ……


明らかに、その人の主観でしか判断のできないお題なんか、出すなってんだ……。

うつむき、松本と手を繋いで、ゴールした待機場所に向かう。
もはやその手を離すことすら意識にない俺の手は、松本によって、ぎゅっと握られ続けてる。


「カズの気持ちはよーくわかったからな」


そう呟いて、俺の半歩前を歩く松本は今にも歌い出しそうなくらい、機嫌がいい。


「…………」


この人の笑顔が好きだ。
だから、まぁ……


「はい……」


いいか……。

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