
キラキラ
第35章 屋烏之愛
一瞬迷った。
きっと、あのバッシュの人物は、目下みんなの話題の中心にいる人なのではないかと思った。
相葉が、中庭で見たっていうし。
あの口ぶりだと、この学校の生徒ではなさそうな気がする。
だとすると、私服だろう、と思うし。
俺のなかで、警戒より好奇心の方が勝った。
松本や大野の関心を集めてる人物がどんな人なのか純粋に興味があった。
それに学校内で、しかもこんなに人がいる場所なら安心だと思った。
俺は、その場所にそっと歩み寄った。
暑い。
昼の太陽がジリジリと容赦なく照りつける。
俺は、緊張しながら、平静を装って、その人の前を何気なく通りすぎようとする。
こんもりと繁ってるツツジの向こうに……
「…………っ」
思わず息を飲む。
思ったよりもずっと綺麗な顔立ちをした学生くらいの男性が、待っていたようにそこに座ってじっと俺を見ていた。
「……ちょっといい?」
涼やかな声が俺を呼び止めた。
