
キラキラ
第35章 屋烏之愛
とても力の強い男だった。
顔は優男なのに、俺の手は、奴につかまれ離すことができない。
協力してって……協力ってなんだよ……?
心臓が、にわかに騒ぎ出す。
これまずいかもしれない。
「ちょっと来て」
「嫌だ……離せ」
「なんにもしやしないよ。ちょっと交渉の場に立ち会ってもらうだけ」
苛立ったように言われて、俺は顔をあげる。
そいつは、ニヤッと笑った。
いい男がこんな笑い方すると気味が悪い。
その綺麗な指が俺の頬をなでた。
「……っ……」
薄気味悪くて、寒気がする。
「……櫻井さんに会いたいんだ。呼び出して?」
「櫻井……さん?」
「はい。電話」
ぽいとスマホを渡された。
そこには、ある電話番号が表示されて、発信のマークが点滅してる。
「あんた、大野や松本と繋がってるなら、櫻井さんも知ってるだろう?いいかい?余計なこというんじゃないよ?」
「…………」
「ここに。あの人を呼んで?」
渡されたスマホから、……もしもし?と、不審げな声がきこえてきた。
