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キラキラ

第35章 屋烏之愛


「あ……あの……二宮です」

「……おまえ、俺の携帯番号なんで知ってるの」


不審そうに一層低くなった声に、とたんに口ごもってしまう。


そりゃそうだ。


スピーカーにしてるせいで、櫻井さんの声はこいつにも届くはず。

この先どうするんだ、という目でそいつを睨むと、上田から聞いたって言え、と、囁いて、手首をねじりあげてきた。


「う……えださんから聞きました」


どうして上田さんが知ってるんだろう?と、疑問に思ったけど、言われた通りに言う。
すると、櫻井さんは、ふーん……と、ますます不審げな声をもらす。


「……あいつが俺の番号、簡単に他人に教えるとは思えないけど」

「あの……」


そこまでいったとたん、電話を、取り上げられた。


「お久しぶりです。櫻井さん」

「……誰だ」

「那須です」

「…………」

「宣言通り来ました」

「…………」

「会いたいです。来てください。中庭の奥にいます。可愛らしい後輩くんと」

「二宮か」

「知りません。でもあなたたちに関係ある子ですよね」

「……おまえ、そいつに手だすなよ」

「さぁ……どうでしょう」


ギリギリと、手首をつかまれる手に力がこめられ、俺は思わず顔をしかめた。

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