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キラキラ

第35章 屋烏之愛


俺の腕をねじりあげてる奴の言葉につられ、視線をやると、少し離れた位置に、息を弾ませた櫻井が立っていた。
走ってきたみたいだ。


……そして、一人だ。


さっき、一人で来なかったら俺がどうなるか、と那須が脅していたことを思い出す。


「……櫻井さん……」


思わず安堵の声がもれた。


櫻井はきっとそうするだろうと、漠然と思っていたけれど、ほんとに連れのいないことに、ちょっと感動してしまった。
俺なんて、松本に好かれてるというだけで、大野グループにはなにも関係ないのに。


櫻井は、固い顔をしながら、ゆっくり歩いてきて。
チラリと俺をみて、眉をひそめた。


「……二宮離してやれよ」


ぼそっと言ってくれたが、那須は小さく、まだダメです、と首をふる。
櫻井は舌打ちして、那須に向き直る。


「……で?俺を一人でよびだして、こんなことまでして、おまえはいったい何がしたいんだ?」


すると、那須は待ってました、というように頷いた。


「去年の宣言通りです。あなたをもらいに来ました」

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