
キラキラ
第35章 屋烏之愛
「……冗談だろ?」
「本気です」
「俺は物じゃねぇぞ」
「知ってます」
「……つか。それ以前に、そのことに関しては、去年断ったはずだけど?」
「はい。でもあなたにふさわしい男になるために、一年頑張って勉強しました」
「…………」
ああ言えばこう言う那須は手強い。
俺は黙って成り行きを見守りながら、櫻井の様子を見つめた。
那須の本気の瞳に、二の句がつげないでいるみたいだ。
「だって。あなたフリーでしょ。好きな人なんていないって言ってたでしょ。なら、俺で試してみてください」
「…………」
那須は、畳み掛けるように櫻井に迫る。
え、フリーなの……?
俺は、櫻井を見る。
すると、櫻井は困ったように口を引き結んだ。
その瞳は、何かを言おうかどうか迷っているような感じに見えた。
…………落ちる沈黙。
やがて、那須は、ふん、と笑って、……こたえられないんですか?と呟いた。
「俺はね、櫻井さんがほんとに好きなんです。だから、手にいれるためならなんでもしますよ」
言って、俺を拘束してる男に目配せした。
「え……うわっ」
油断していた。
突然、話の矛先がこちらにむいたと思ったら。
あっという間に中庭の芝生に押し倒されて、そのまま男が馬乗りになってきた。
