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キラキラ

第37章 寵愛一身



そのなんともいえない表情に、胸がズキッとする。

俺は、悪くない、といいきれないところが、辛い。
だって……隙をつかれたのは自分自身の責任でもあるからだ。


「カズ……」

「はい……」


何を言われるのだろうと、固くなってうつむいてると、


…………!


ふいに抱き寄せられ、大きな胸に、ぎゅうっと抱き込まれた。


さっきも抱きしめられたけど、片手だったから、密着していただけだ。

こんなに、体ぜんぶで抱き込まれたのは久しぶりで……。

松本がいつもつけてる香水の香りと、少しの汗の匂い。
体の熱さ。
俺を抱く太い腕。


そのどれもにドキドキして、思わずぎゅうっと目をつぶる。

松本の手のひらが、優しく俺の後頭部を撫でた。


「前も言ったよな……隙をみせるなって」

「はい……」


那須のときのことだ。(第35章 屋烏之愛 参照)
確かにあのときも、こんなシチュエーションで言われた。


「……ごめんなさい」

「謝らなくてもいい。……准一は特殊だし」

「はい……」


おもったより優しい声音に、俺は、おずおずと自分の手を松本の広い背中にまわした。

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