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キラキラ

第37章 寵愛一身


眠り姫のワンシーンのように、松本の目が静かに開いた。


「……カズ?」


ちょん、と自分の横に座ってる俺をみて、松本は眩しそうに瞬きを繰り返した。



「……もう昼休みか?」

「はい。もうすぐ。……えと……俺のクラスは自習だったので……」


苦しい嘘をついたが、松本は信じたみたいだった。


「そっか……」

「松本さんは……?サボったんですか……?」

「いや、自習だ」

「…………ほんとに?(笑)」

「……自主的にな」


悪戯っぽく微笑みながら、松本はゆっくり肩肘をついて体を起こした。
そうしてそのまま片手で抱き寄せられる。

首筋からふわりと松本の香りがする。
彼が最近好んでつけてる柑橘系のコロンの香り。

准一のバニラみたいな香りや、光一さんのホストみたいな大人の香りと違う。

爽やかで……とても安心できる。

俺は、思わず自ら体を寄せて、松本の体にしがみついていた。


「……?どうした」

「……なんでも」

「珍しいな」


言いながら、嬉しそうに松本は俺をぎゅっと抱き締めた。
学校だから、とか、誰かくるから、とか、いつもの俺ならすぐに離れていただろうけれど。

なんだか胸がいっぱいで、俺は、いつまでも松本にくっついていた。

相葉たちの、ヒューっていうからかう声に、我にかえるまで。

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