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キラキラ

第37章 寵愛一身


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待ちに待った放課後。

松本と一緒に、彼の家方面の電車に乗る。
光一さんの手料理をいただけるなんて、楽しみだけど……朝のことを口止めするのを忘れたな、と
不安になる。


潤くんには内緒にしときたいんだけどなぁ……


黙ってたのがバレたときも怖いけど、できるならそれは今日じゃないほうがいい。
楽しみにしてた予定が、楽しくなくなっちゃう。

光一さんを手伝うふりをして、准一のことは黙ってて、ってこっそりお願いするしかないかな……


ぼんやりとしていたら、つんと肘でこづかれた。


「……どうした?考え事か」

「……あ……はい……あの、お料理なにかなって」

「あいつ、朝から張り切って買い物いくっていってたぞ」

「そ……ですか」


……あの商店街に買い物に来てたんだ……


俺は、内心ひとり納得して、松本を見上げた。

松本は、楽しみだな、と笑顔だ。

一応、周りの目を気にしてくれる松本は、俺の手を握りたくなるからと、わざとフリーな片手はポケットにつっこみ、つり革を握ってる。

俺もその横で立っているのだけど、彼いわく、俺は、立ち方があぶなっかしいらしくて。

大丈夫だ、というのに、ガタンと電車が揺れるたびに、手を伸ばして腰を支えてくれるから……照れてしょうがない。


「耳が赤いぞ」

「……からかわないでください」


含み笑うような声に、俺は、黙ってうつむくしかできなかった。

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