
キラキラ
第37章 寵愛一身
「じゃあな」
大きなボストンバッグをさげて、革靴をはいた光一さんは、俺たちを振り返った。
「……んな、寂しそうな顔すんなや」
「そんな顔してねーし」
ぷっと膨れてる松本は、ほんとに少し寂しそうだ。
「…………」
無理もないだろう。
こんな大きな家に一人で暮らすって、俺には想像がつかない。
お手伝いさんがいるって言っても、家族との関係性とは違う。
強い人だと、思っていたけど……そこはやっぱり年相応なんだろう。
「また来るから」
「……おう」
にこりとした光一さんは、俺に視線をうつした。
「二宮くん、潤をよろしくな?」
「え……」
「こいつ、意外とさびしがりやの甘ったれだから、君みたいな子がいてくれたら安心や」
「おい、でたらめいうな」
松本が慌てて間にはいる。
でも、俺は、この数日間、光一さんに絶大な信頼をおいてる松本と、松本をほんとに可愛がってる光一さんを見てきたから、
「……はい」
俺が、少しでも松本の心の隙間に入れるなら、嬉しいと思った。
「今夜は、うまい飯食って、体力つけて。潤と存分にラブラブしてけよ?」
「……なっ」
「!おい……!」
「タクシー来たわ。じゃな。」
俺らの反応を見て、すかさず、光一さんはするりと扉をあけ、片手をふりでていった。
パタン、と扉がしまり。
その場に残されたのは、光一さんのホストみたいな香水の残り香と、
「……ったく、あいつは……」
真っ赤な松本と、
……ラブラブって。
光一さん、言葉のチョイスがおっさんみたいだ。
妙におかしくて、何故だか笑ってしまう俺だった。
