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キラキラ

第37章 寵愛一身


「……げほっ…」


松本がむせながら、黙ってチャンネルをかえる。


意識しないようにしようと、俺も何食わぬ顔で、アイスティーを飲んだ。


「……この時間……なんにも面白いのやってねーよなぁ」


呟いた松本は無難に動物番組にあわせて、ストローをくわえた。
時間はまだ八時をまわったところだ。
こんな時間からあんな濃厚なのやってんの?と、内心驚きながら、シフォンケーキにフォークをいれた。


「あ、おいしーです」


甘いものは別腹とは女の子の言葉だと思ってた。
お腹いっぱいだったはずが、これなら食べれそう。
フワフワで口溶けもよくとても食べやすい。


「あいつ、スイーツ男子だからな……」

「え。そうなんですか?」

「酒も強いくせに甘いもの大好きなんだ」

「へぇ……」


言いながら、画面に何気なく目をやり、固まる。

番組では、動物の交尾のシーンをうつしだしてた。
生命の理だ。
普段ならなんの感情もなくみてるのだが。

隣の松本が、あわててまたリモコンを手に取った。

「……つ、つまんねーな……」

その拍子に、カシャンとフォークが皿におちて大きな音がした。

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