
キラキラ
第38章 バースト11
自室からでてきた智兄は、ネクタイを結びながら時計を見上げる。
「やべ……時間……」
「道路雪でぐちゃぐちゃだよ。走れないけど大丈夫?」
「……めちゃめちゃ早足になるから大丈夫」
ふふ、と笑んだ智兄は、最後に、ばさりとコートをはおる。
いつもは、ふにゃっとしたおっとりした智兄だけど、ひとたびスーツを着ると、びしりとした顔になる。
この変身ぶりが、俺は好きだ。
……わが兄ながら、カッコいい。
「じゃぁ行ってくる」
「ん。気をつけて」
「お前もな」
言い残して、智兄は足早に外に出ていった。
ふわりと香る残り香は、俺が安心する匂い。
智兄は、香水なんて、つけたことないけど、いつもなんとなくいい匂いがする。
そして、これは、俺の精神安定剤みたいなものなのだ。
キッチンに戻った俺は、時計を見上げた。
さて……俺も学校だ。
俺は、自分の分のコーヒーをカップに注ぎ、残りのパンに手を伸ばした。
講義自体は、まだ冬休みなのだが、ゼミの仲間と集まる約束をしている。
集合時間は、昼前だから、それほど急がないが、のんきにしてたら時間のたつのはあっという間だから注意せねば。
俺は、窓の外に目を向けた。
雪がまたチラチラと降り始めていた。
