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キラキラ

第38章 バースト11


昼にかけて、次第に雪は本降りになってきた。

研究室の外からみえる木々が、みるみる雪の綿帽子をかぶっていくのをみて、うんざりする。

幼い頃は、雪が降るというだけで楽しくてワクワクしていた。
それまでは、寒いから、と、部屋のホットカーペットの上から動かなかったのに、現金なもので、雪、と聞いただけで、自ら外に飛び出していたものだ。

いつごろからだろうな……雪が、ただの気象状況のひとつとしか捉えられなくなったのは。


「すごいな、めちゃめちゃ降りだした」


ところが、同じゼミの増田は、うわぁ……と、嬉しそうな声をあげた。


おいおい……マジか。


「……嬉しそうだな」


苦笑まじりにからかうと、増田は仔犬のような目を細めて、うんうん、と頷いた。


「雪ってだけで、テンションあがんね?」

「……あがらん」

「えー、真っ白に積もった場所に、思い切り顔型つけたいとか思うだろ?」

「……100歩譲って、足跡はあるかもしれないが、顔型は思わない」

「……イケメンはこれだから」


大袈裟に肩をすくめてみせる増田に、俺は、


「関係ねーだろ」


と、言い返して、缶コーヒーを手にした。

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