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キラキラ

第38章 バースト11


「……えっ……」


電話は、智兄の会社からだった。
始業時間になってもあらわれない智兄を心配して電話をかけてきたという。

俺は、再び胸がドキドキしてきた。


…………会社にも行ってないって……どういうことだよ


『大野さん?お兄さんはお家にいらっしゃるんですか?』


優しそうな上司の方の声に、ハッとする。
頭で、どう答えるのかが一番正解なのかを弾き出し、俺は、


「あ……すみません。兄は昨晩から高熱で朦朧としてて……病院連れていったりしてたら、俺がそちらにご連絡するのを怠ってました」


と、嘘をついた。

すると、その人は、盛大に心配してくれたあげく、休暇届けだしておくので、回復したらでてきてください、と言ってくれた。

俺は、震えそうになる声を叱咤しながら、丁寧に礼を言って電話を切った。

だが、しばらくその場からうごけなかった。

現状整理に、気持ちがついていかない。


……どーいうこと


昨晩から連絡のとれない20代男性が、会社にも現れてません……っていうこと?

俺は、再びスマホに手を伸ばし、智兄の携帯を鳴らした。
聞きあきた機械の声が流れるのを、ぼんやりと聞き流す。


……なにしてんだよ。

智兄。

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